「オールドバカラ」のブランドマークと刻印の変遷について

「オールドバカラ」のブランドマークと刻印の変遷について

オールドバカラ(Old Baccarat)は、フランスを代表するクリスタルブランド「バカラ(Baccarat)」が19世紀から20世紀中頃にかけて製造した、いわば芸術品とも言えるヴィンテージ作品群を言います。その気品あるデザインと緻密なカット技術、そして現代製品では得られない味わい深さから、世界中のガラス工芸愛好家や骨董コレクターの間で非常に高い評価を受けています。


1.オールドバカラの定義と背景 

一般的に「オールドバカラ」とは、1930年代以前に製造された作品を指します。ただし広義では、第二次世界大戦前後、つまり1950年代初頭までの製品も含まれることがあります。バカラ社は1764年にルイ15世の勅命により設立され、19世紀にはヨーロッパ各国の王侯貴族に愛用されるクリスタルブランドとしての地位を確立しました。

当時の作品は、工芸的価値に加えてデザイン性も非常に高く、アール・ヌーヴォーやアール・デコといった芸術運動の影響を色濃く反映しています。Talleyrand(タレイラン)、Nancy(ナンシー)、Harcourt(アルクール)など、有名なシリーズには今では再生産されていないものも多く、希少性がそのまま価値に直結しています。

 

2.オールドバカラの特徴と魅力 

オールドバカラの最大の魅力は、手作業による仕上げにあります。カットや彫刻は機械では再現できない繊細な美しさを持ち、ガラスの厚みや光の反射によって独特の存在感を放ちます。現行品とは異なり、1936年以前の製品には刻印がないことが一般的のようで、グラスのデザインや質感、製法をもとに真贋を見極める知識が求められる点も、コレクターにとっては魅力の一部となっているようです。下記に1862年から現代に至るまでのブランドマークの変遷についても共有します。

また、かつてオールドバカラに使用されていた装飾技法(例えば金彩やエナメル装飾、オパーリンガラスなど)は、現代ではコストや技術的制約から再現が難しく、オールドバカラの希少性をさらに高めているそうです。

 

3.市場価値と流通状況 

日本でも明治時代からオールドバカラは富裕層や文化人に愛されてきました。現在でも、アンティークフェアや専門オークション、ヨーロッパの蚤の市などで取引されており、状態が良ければグラス1脚で数万円、デカンタやセット品になると数十万円から数百万円に達することもあります。

さらに、オリジナルボックス付きやシリーズ揃いのアイテムは、コレクターからの人気が高く、資産価値としても注目されています。海外ではアメリカやフランスを中心に需要が高く、特に飲食業界の一流レストランやバーでも演出用に使われることがあります。

 

4.オールドバカラと現行バカラの違い

現代のバカラ製品も、精密な製造工程とデザイン性の高さから人気を博していますが、量産体制やブランド志向の変化により、工芸的な一品物としての味わいは薄れつつあります。

それに対してオールドバカラは、どこか温かみがあり、作品ごとに個性を持っているのが特徴です。「使うための芸術品」として、日常に取り入れられるラグジュアリーアイテムとも言えるでしょう。私は宝石のように削り取られたクリスタル製品よりも、オールドバカラの丸みと厚みがどことなく優美に感じます。

オールドバカラは単なる高級グラスではなく、歴史、芸術、技術、そして職人の魂が込められた結晶です。その価値を知れば知るほど、その美しさと奥深さに引き込まれることでしょう。もしあなたがまだその魅力に触れたことがないなら、ぜひ一度、オールドバカラのグラスを手に取ってみてください。その瞬間、時代を超えた美の世界が目の前に広がるはずです。

 

5.今から約120年前、19世紀初めの時代に使用されていたバカラの商品カタログ

 

上記画像がバカラ社の社内商品カタログ1907年~1908年(左)、と1916年(右)版です。下記に1916年に発行されたバカラのカタログを一部共有しますので、オールドバカラに関心のある皆様の参考になればと思います。

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