グレンファークラス105(GLENFACLAS105)の変遷とジェネレーション判別法

グレンファークラス105(GLENFACLAS105)の変遷とジェネレーション判別法

現在、世界的な物価上昇の影響でほぼ全てのウイスキーのリリース価格が高騰していますが、その中で最も価格上昇が遅かった銘柄の一つが、この「グレンファークラス」です。エンジェルズ・シェア(天使の分け前)が少ない特殊な熟成環境により、低価格で多くの原酒を供給してきたグレンファークラスだからこそ、他銘柄に比べてリリース価格が低く抑えられ、その結果、消費者価格の上昇も相対的に遅かったのではないかと考えられます。

さらに、グレンファークラスのオフィシャル・コアラインに関しては、かなりの高年数であってもそれほど脚光を浴びてこなかったことも、価格が上がりにくかった理由の一つでしょう。「美味しいグレンファークラス」を選んで飲むだけの知識や選択肢が消費者に十分になかったため、価格も容易には動かなかったようです。

しかし、その中においても大衆的で人気が高い銘柄があります。それが現在まで多くの愛好家に親しまれている「グレンファークラス105(105プルーフ、アルコール度数60%)」です。個人的に、最近リリースされたグレンファークラスを飲む機会はそれほど多くなかったのですが、先日飲んだ「105」の1970年代流通バージョン(8年熟成)が衝撃的なほど美味しかったのが記憶に新しいです。

 


 

(写真:1970年代に流通したと推定されるグレンファークラス105。東京・池袋の「BAR 玉彦(タマヒコ)」にて)

それでは、グレンファークラス105について詳しく紐解いていきましょう。

グレンファークラス105は、4代目当主ジョージ・グラント氏が、業界初の「公式なカスクストレングス(加水なし)」のボトルとして1968年に発売したシリーズです。その名は、英国式のアルコール度数表記である「105プルーフ」に由来しています。

1960年代後半の発売開始から、幾度かの変遷を経て、80年代に入ってデザインが大きく変わり、その後2000年代半ばに再び大きなデザイン変更が行われました。以下、初期のボトルから2000年代に至るまでの「105」をチェックしてみましょう。

1) グレンファークラス105:1970年代流通バージョン

1968年の発売開始後、ラベルも微妙に何度か変わっており、英国流通、イタリア流通、アジア圏流通など細かな違いはありますが、ここでは代表的なボトルをご紹介します。ちなみに、恐ろしいほどに美味しいです。

 

2) グレンファークラス105 Pure Malt:1970年代後半〜1980年代前半流通バージョン

実物を見たことはありませんが、1980年前後に流通していたボトルと思われます。表記は8年熟成ですが、この時代までのものは最低8年以上の高熟成原酒が贅沢にヴァッティング(調合)されているのではないかと推測されます。当時は現在ほど熟成年の表記が厳格に重視されていたわけではなく、あくまで「最低熟成期間」としての記載だったニュアンスが強いです。

 

3) グレンファークラス105 Rare Highland Malt:1980年代半ば流通バージョン

1985年頃に初めて登場したデザインだと思われます。この時のデザインが、2000年代初頭まで続く「105」の基本形となりました。ウイスキーベース(Whiskybase)などの評価サイトでは前後の世代よりスコアが低いこともありますが、評価時点での相対評価や評価人数の少なさによる誤差があるため、それほど気にする必要はないでしょう。

 

4) グレンファークラス105:1980年代後半流通バージョン

私の所有ボトルですが、非常に美しくオールドボトルの情緒が漂っています。興味深いことに、このボトルは低熟成年でありながらウイスキーベースで90点を超える極めて高い評価を得ています。点数を鵜呑みにするわけではありませんが、レーティングのインフレを考慮しても、その香りと味わいに期待を抱かせるスコアです。

1970年代初頭まで、グレンファークラス105には「8年」という熟成年数が記載されていましたが、需要拡大に伴う生産規模の拡大により、各バッチに8年以上の原酒を追加せざるを得なくなったそうです。同時に、味のバランスを整えるために8年未満の原酒も一部混ざったのではないかと推察されます。最年少原酒の年数を表記しなければならないルール上、8年未満が混ざることで「8年」と記載できなくなり、熟成年表記が削除されました。

結論として、1980年代にボトリングされた「105」は、8年熟成を基準に考えた際、1990年代以降のボトルに比べてクオリティが高くならざるを得なかった背景があります。これがウイスキーベースでの90点超えという評価に反映されているのかもしれません。

 

5) グレンファークラス105:1990年代〜2000年代初・中盤流通バージョン

1990年代後半から2000年代初頭にかけてラベルに熟成年表記が復活し、「10代熟成」の表記が始まりました。もともと8年を超える原酒が使われていたため、10年表記への変更は熟成期間が延びたというより、実態に合わせたものと言えます。しかしその後、さらなる需要増に応えるため多種多様な熟成年の原酒をヴァッティングする必要が生じ、管理上の理由からか、再び年数表記は削除されました。

それ以降、つまり2010年頃からのグレンファークラス105は、実質的な熟成年数が8年未満であるという意見が支配的です。バッチによって差はありますが、10年以上の原酒はほとんど使用されていないとも言われ、クオリティが急激に変化した時期とも言われています。

 


 

【番外編】グレンファークラス105 高年数バージョン

グレンファークラスはこれまで、3回だけ特別な「高年数版105」をリリースしています。

  • グレンファークラス105 20年熟成 (2012年ボトリング、4000本限定、シェリーカスク熟成) 1990年頃に蒸留され、2012年に発売。現在、欧州のショップ等では約7〜8万円前後で取引されているようです。

  • グレンファークラス105 22年熟成(Celebrating 50 Years of 105) (2018年ボトリング、3600本限定、シェリーカスク熟成) 1968年の105誕生から50周年を記念した特別版。欧州価格で約5〜6万円程度。後から発売された分、20年版より少し手頃な傾向にあります。

  • グレンファークラス105 40年熟成(40th Anniversary Limited Edition) (2008年ボトリング、893本限定、オロロソシェリーカスク熟成) 1968年頃に蒸留され、2008年に発売された超高級ボトル。現在、欧州の有名ショップでは約70〜80万円程度の高値で取引されています。

以上、グレンファークラス105についての紹介でした。 希少な「105」のオールドボトルを見かけたら、今のうちに手に入れておくべきでしょう。これからも価格は上がり続けるはずですから。

 

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