サントリーの新時代への挑戦:「THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY」シリーズ

サントリーの新時代への挑戦:「THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY」シリーズ

2023年の秋、サントリーの関連会社を訪れた際、おもてなしとして提供されたウイスキーの一つが、このシリーズの2021年エディション「山崎11年 アイラピーテッド(54% / 500ml)」でした。2018年2月から始まっていたこの限定シリーズの存在を、2021年以降ウイスキーに多額の資金を投じながらも知らずにいた自分を、その瞬間に深く悔やんだことを覚えています。それほどまでに、このウイスキーは非常に興味深く、素晴らしい完成度を誇っていました。

このシリーズは、生産背景や詳細な情報が広く公開されているわけではありませんが、幸運にもサントリー本社から詳しい説明を聞く機会に恵まれました。これらのボトルは非常に独創的です。100年にわたりウイスキー造りを続けてきたサントリーが、「ジャパニーズウイスキーの次の100年をどうリードすべきか」という苦悩と情熱の末に生み出した結晶なのです。

現在の山崎、白州、響、知多とは異なるアプローチを模索し、これまでにないカスクでの熟成、独自のブレンディング、さらには全く新しい「ライス(米)ウイスキー」のリリースなど、実験的な試みが凝縮されています。2018年から毎年2〜3種ずつ、それぞれ約3,000本のみという極めて少ない本数で生産されました。サントリーの新たな挑戦の記録として、ここに各ボトルの詳細を記します。

 


【第1弾】2018年2月27日発売:三蒸溜所の個性の再発見

山崎、白州、知多の三つの蒸溜所の原酒を用いた、記念すべきシリーズ第1弾です。

1. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈ピーテッドモルト〉

  • 熟成年数: 12年
  • 度数: 49%
  • カスク: アメリカンオーク・ホグスヘッド
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 山崎蒸溜所では多彩な原酒を造り分けていますが、ピーテッド原酒もその一つです。通常、ブレンディングの隠し味として少量加え、香りに複雑さとフィニッシュにアクセントを与える役割を担います。本作は、力強いスモーキーさの中にも、山崎らしい柔らかい熟成感を持つ原酒を厳選してボトリングしています。

 

2. シングルモルトウイスキー 白州蒸溜所〈ライタイプ〉

  • 熟成年数: 4年
  • 度数: 47%
  • カスク: アメリカンオーク・バーボンバレル(ニューオーク)
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 白州蒸溜所では2010年に導入された特殊な小型の連続式蒸溜機を使用。ライ麦由来の個性を残すため、あえて低めのアルコール度数で蒸溜されました。強くチャー(加熱)したバーボンのニューオーク樽で熟成。フローラルでハーブのような香りと、ライ麦特有のスパイシーな余韻が際立ちます。

 

3. シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所〈ワインカスク4年後熟〉

  • 熟成年数: 16年
  • 度数: 47%
  • カスク: アメリカンオーク・バーボンバレル(12年)→ ボルドーワインカスク(4年後熟)
  • 容量: 500ml
  • 特徴: ホワイトオークで12年以上熟成させたミディアムタイプのグレーン原酒を、ボルドーの赤ワイン樽でさらに4年以上追熟。グレーンらしいクリーンで真っ直ぐな質感と、ワイン樽由来のエレガントな甘みと風味が直感的に楽しめる一本です。

 


【第2弾】2019年2月26日発売:カスクストレングスの深淵

スペイン産の樽を中心に、熟成の妙に焦点を当てた第2弾です。第2弾は、山崎シングルモルトウィスキー中でもシェリー樽熟成のカスクストレングス(に近い)であることからウィスキーの愛好家の間で最も人気の高いシリーズになっています。私もすべて飲んだことがありますが、第2弾では〈スパニッシュオーク〉が一番直感的に美味しいと思いました。

4. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈スパニッシュオーク〉

  • 熟成年数: 9年
  • 度数: 56%
  • カスク: スパニッシュオーク(ニューオーク)
  • 容量: 500ml
  • 特徴: サントリーが自ら材料を買い付け、組み立てまで管理するスパニッシュオークのカスク。そのニューオーク(新樽)のみで熟成された本作は、ウッディかつスパイシーな香りと、輪郭のハッキリとした濃厚な味わいが特徴です。

 

5. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈モンティージャワインカスク〉

  • 熟成年数: 9年
  • 度数: 55%
  • カスク: モンティージャワイン・オーク
  • 容量: 500ml
  • 特徴: スペイン南部モンティージャ・モリレス地区の酒精強化ワイン(モンティージャ)の熟成に使用されたスパニッシュオーク樽を使用。ペドロ・ヒメネスを彷彿とさせる濃厚な甘みと、複雑で長い余韻を楽しめます。

 

6. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈リフィルシェリーカスク〉

  • 熟成年数: 10年
  • 度数: 53%
  • カスク: スパニッシュオーク・リフィルシェリーカスク
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 一度ウイスキーの熟成に使用した後のシェリー樽(リフィルカスク)で再熟成。ファーストフィル(初年度)の濃厚さに対し、リフィルならではの滑らかで澄んだ味わいと、繊細な熟成のニュアンスが魅力です。

 


【第3弾】2019年10月29日発売:杉樽(スギカスク)の革新

日本固有の「杉」を用いた、ブレンデッドウイスキーの新しい可能性です。第3弾で注目すべきウィスキーは〈リッチタイプ〉です。ブレンデットウイスキーだからといった点から他のシリーズより人気は低いですが、「THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY」シリーズの中で最も原酒の熟成年数が長い、リッチな原酒でブレンドされた高級で美味しいウィスキーです。

7. ブレンデッドジャパニーズウイスキー〈クリーンタイプ〉

  • 構成原酒: 白州(杉樽熟成・ホワイトオーク熟成)、知多(クリーンタイプ)
  • 熟成年数: 6年以上
  • 度数: 48%
  • カスク: 杉(スギ)
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 鏡板に杉を使用した「杉樽」で6年以上熟成させた白州モルトを軸にブレンド。杉樽由来の爽やかな香りと、クリーンなグレーン原酒が調和した、非常に清涼感のある甘みが特徴です。

 

8. ブレンデッドジャパニーズウイスキー〈リッチタイプ〉

  • 構成原酒: 山崎(杉樽後熟・シェリー・ミズナラ)、知多(18年以上)
  • 熟成年数: 18年以上
  • 度数: 48%
  • カスク: ホワイトオーク、杉、シェリー、ミズナラ
  • 容量: 500ml
  • 特徴: ホワイトオークで12年以上熟成させ、その後「杉樽」に詰め替えて更に6年以上熟成した山崎蒸溜所のモルト原酒に、シェリー樽やミズナラ樽で18年以上熟成した山崎蒸溜所のモルト原酒、そして同じく18年以上熟成の知多蒸溜所のグレーン原酒をブレンダーが厳選し丁寧にブレンド。熟成感のあるスイートでリッチな味わいのあとに、杉が香る余韻をお愉しみいただけます。

 


【第4弾】2020年4月28日発売:桜と米、日本文化の融合

サントリーグループで主に乙類焼酎を製造する大隅酒造で、米を主原料とし、麦芽で糖化し発酵させ、蒸溜したライスウイスキーです。ホワイトオーク材の樽で3年以上熟成したこのウイスキーは、ふっくらとした軽いトップノートの中に、かすかに白桃を思わせる果実香があり、味わいは柔らかく軽やか。

9. ライスウイスキー(大隅酒造

  • 熟成年数: 3年以上
  • 度数: 56%
  • カスク: ホワイトオーク
  • 容量: 500ml
  • 特徴: サントリーグループで焼酎を製造する大隅酒造にて、米を主原料にモルトで発酵・蒸溜。炊き立ての米を思わせるふくよかな香りと、白桃を連想させるフルーティーさが同居した、極めてユニークで軽快な一本です。

 

10. シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所〈桜樽後熟ブレンド〉

  • 熟成年数: 18年
  • 度数: 50%
  • カスク: 桜(サクラカスク)
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 知多グレーンをホワイトオークで15年以上熟成させた後、桜樽でさらに3年以上追熟。桜餅を思わせる華やかな香りと、12〜21年熟成の知多原酒のまろやかさが溶け合っています。

 


【第5弾】2021年8月31日発売:麦芽の品種へのこだわり

希少な麦芽「ゴールデンプロミス種」を使用したシングルモルトウイスキーと、アイラ島で採掘したピートを焚いて乾燥させた麦芽で仕込んだシングルモルトウイスキーの2種です。〈ゴールデンプロミス〉は、おそらくサントリー社が公式に発売した初めてのゴールデンプロミス麦のウィスキーではないでしょうか。その出来栄えも素晴らしいです。

11. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈ゴールデンプロミス〉

  • 熟成年数: 11年
  • 度数: 53%
  • 容量: 500ml
  • 特徴: 1960〜80年代にスコットランドで主流だった希少品種「ゴールデンプロミス種」の麦芽のみを使用。山崎らしい力強さに加え、この品種特有の柔らかな穀物の香りと濃密なコクが際立ちます。

 

12. シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所〈アイラピーテッド〉

  • 熟成年数: 11年
  • 度数: 54%
  • 容量: 500ml
  • 特徴: アイラ島で採掘されたピートを用いて乾燥させた麦芽を使用。アイラピート特有の力強いスモーキーさと、潮風を思わせる香りが、山崎の洗練された酒質の中で見事に開花しています。

 


市場価値と今後の展望

「エッセンス・オブ・サントリー」シリーズは、発売当初の価格こそ8,000円でしたが、現在は山崎ブランドの人気も相まって、市場価格は数倍に跳ね上がっています。特にヨーロッパなどの海外市場では、1本1,500ドルを超える価格で取引されることもあります。

日本国内でも入手困難な状況に変わりはありませんが、世界的な相場と比較すれば、まだ手の届くチャンスが残されています。サントリーが技術の粋を集めたこれら希少なボトルは、コレクションとしても、至高のテイスティング体験としても、今後さらにその価値を極めていくことは間違いありません。

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