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北村 一朗 作 金属工芸 栓抜き『てんとう虫』縁起物 #165

北村 一朗 作 金属工芸 栓抜き『てんとう虫』縁起物 #165

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この写実的な木の葉に愛らしいてんとう虫が留まった作品は、重要無形文化財保持者(人間国宝)である北村眞一氏の父であり師匠であった、著名な金工作家、北村一朗(きたむら いちろう、1917〜1968)氏による栓抜きです。

付属の略歴からも読み取れる通り、北村一朗氏は大正時代に生まれ、東京美術学校(現:東京藝術大学)で金工を修めた後、日本伝統工芸展や文展などで数々の入選と受賞を重ね、日本の伝統工芸界の発展に尽力しました。その高度な技術と芸術性は、日本伝統工芸展で東京都教育委員会賞を受賞するなど、国からも高く評価されています。

本作品は、葉脈の一本一本までが精緻に表現された「木の葉」をベースに、鮮やかな赤の色彩が目を引くてんとう虫がアクセントとして添えられています。素材と技法については、北村氏の作風と当時の高度な金工技術に基づいた推察になりますが、ベースとなる木の葉は銅、または青銅に「煮下げ」と呼ばれる伝統的な着色(大根おろしや薬品を用いた煮込み液による発色)を施し、深い渋みと写実的な質感を追求したものと考えられます。

一方、てんとう虫の翅(はね)の艶やかな赤は、金属表面にガラス質の釉薬を焼き付ける「七宝(エナメル)」によるものと推測されます。そのぷっくりとした質感と瑞々しい輝きは、金属という冷たい素材に生命の火を灯したかのようです。さらに、頭部や装飾に見られる金色は、真鍮の地色、あるいは金鍍金(本金メッキ)を効果的に配することで、太陽に向かう生命の輝きを表現しているようです。

てんとう虫は古来より「天道(太陽)に向かって飛ぶ」ことから、幸運を運ぶ縁起物として親しまれてきました。金属の重厚な質感の中に、七宝の鮮烈な赤と金色の対比が美しく、作家の遊び心と卓越した色彩感覚がこの小さな空間に凝縮されています。

裏面には、手にした際の安定感を支える機能的な持ち手と栓抜き機構が一体となって設けられており、作家のサインである「K」の文字が刻まれています。

実用品でありながら、卓上のオブジェとしても格別の存在感を放つ本作品は、ウイスキーとチェイサーのビールを一緒に楽しむ際の優雅なツールとして、また大切な時間を彩る「縁起物」としても最適です。日本の金工史を支えた名匠の手仕事が、日常のひとときを特別な儀式へと変えてくれる逸品です。

  • 作者:北村 一朗(1917〜1968)
  • 作者の代表的な活動歴:[1967年] 第14回日本伝統工芸展東京都教育委員会賞受賞
  • 制作年代:1960年代(推定)
  • 状態:非常に良い(経年による微細な擦れはあるが、機能的・審美的に良好)
  • 付属品:専用箱 あり
  • 材質:銅製(ベース)、七宝(赤色部)、金鍍金または真鍮(金色部) ※いずれも推定
  • 寸法:約13cm
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