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十三代 横石 臥牛 作 現川焼の再興と「風」を封じ込めた刷毛目の極致 陶器酒杯 #177

十三代 横石 臥牛 作 現川焼の再興と「風」を封じ込めた刷毛目の極致 陶器酒杯 #177

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江戸時代中期、長崎の地でわずか50年ほどのみ焼かれ、突如としてその姿を消した伝説の「現川焼(うつつがわやき)」。その「幻の陶器」を現代に蘇らせ、芸術の域へと押し上げた孤高の陶芸家が、十三代 横石臥牛(1927-2016)です。本作は、氏が1975年に長崎県指定無形文化財保持者に認定され、名実ともに現川焼の第一人者として君臨していた全盛期の美学を色濃く反映した傑作です。

十三代の作品を語る上で欠かせないのは、鉄分の多い赤土を極限まで薄く成形する、磁器にも勝る繊細な造形力です。陶器でありながら、指で弾けば金属的な澄んだ音を響かせるその薄さは、現川焼がかつて「東の精巧、西の現川」と称えられた所以でもあります。この独自の地肌の上に施されるのが、十三代の代名詞ともいえる流麗な「刷毛目(はけめ)」です。白い化粧土を乗せた刷毛を、一瞬の迷いもなく素地に走らせることで生まれるその模様は、時に荒れ狂う波濤のように、時に静かに流れる雲のように見え、器の中に目に見えない「風」の流れを可視化させます。

特に本作に描かれた「ススキ」の意匠は、十三代が最も得意とし、世界中の愛好家を魅了し続けているモチーフです。風にあおられ、まるで海の波が打つように一方向にたなびくススキの穂は、単なる写実的な植物画ではありません。それは、化粧土が乾き切る前のわずか数秒の間に、鋭い竹べらなどで描き出す「笹掻き(ささがき)」という、やり直しのきかない極限の集中力から生み出される「躍動の記録」です。この背景の刷毛目とススキが織りなす情景は、日本の原風景である秋の原野を想起させると同時に、計算し尽くされた抽象的な美しさを併せ持っています。

ウィスキーを嗜む方にとって、本作は最高の「対話相手」となるはずです。現川焼特有の深い赤褐色の地肌は、熟成されたシングルモルトの琥珀色をこの上なく鮮やかに際立たせ、極薄の飲み口は液体の繊細な香味をダイレクトに口腔へと導きます。2016年に氏がこの世を去った今、その鋭い感性と超絶技巧が宿る「本人作」の供給は完全に絶たれました。昭和天皇や上皇陛下へ幾度も献上されたという輝かしい歴史と、一人の作家が人生を賭して再興した「執念の美」が宿るこの器は、単なる酒器を超えた、所有する者の矜持を映し出す特別なピースとなるでしょう。

  • 作者: 十三代 横石 臥牛(よこいし がぎゅう、1927-2016)
  • 作者の代表的な活動歴: 絶絶えていた「現川焼」を再興。[1975年] 長崎県指定無形文化財「現川焼」保持者に認定(単独認定)、[1982年] 第29回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞受賞、[1993年] 勲五等瑞宝章を受章。昭和天皇・上皇陛下(当時皇太子)への献上を幾度も行い、現川焼の地位を不動のものとした。
  • 作品収蔵: 長崎県立美術館、佐世保市博物館島瀬美術センター、など
  • 制作年代: 1980年代〜1990年代(昭和末期〜平成初期) ※本意匠(風にあおられるススキの躍動的な刷毛目)は、1982年の工芸展受賞前後から1993年の受勲期にかけて、氏の技法と芸術性が最も円熟し、国内外で高く評価された「黄金期」の典型的な特徴です。
  • 状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし)
  • 付属品: なし
  • 材質: 陶器(現川焼・刷毛目笹掻き)
  • 寸法: 口径 約 5.5 cm、高さ 約 7.5 cm
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