小西 洋平 作 常滑焼 練上げ 馬上杯『掌中の珠』酒器 #197
小西 洋平 作 常滑焼 練上げ 馬上杯『掌中の珠』酒器 #197
この馬上杯は、常滑焼の伝統的な技術を現代芸術の域まで高めた名工、小西洋平(1941-)氏による1980年代の傑作です。1982年にフランスのバロリス国際陶芸ビエンナーレで銀賞を受賞し、氏の名声が国内外で確立された直後の1985年5月頃に、当時日本屈指の高級美術工芸の拠点であった東京銀座の青花堂にて選定された由緒ある一点です。常滑市指定無形文化財保持者でもある氏の作品は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館やフィラデルフィア美術館といった世界的な美術館にパブリックコレクションとして収蔵されており、本作はその卓越した芸術性を掌の中で堪能できる貴重な一客といえます。
小西洋平氏の創作において最も高く評価されているのは、色の異なる土を緻密に積み重ねることで文様を描き出す練り上げ技法と、ろくろ技術の限界に挑む薄造りです。本作に活かされている練り上げは、常滑特有の朱泥、白泥、黒泥を幾重にも層状に重ね合わせたもので、単なる表面的な絵付けとは一線を画す、器の内部から滲み出るような奥行きのある景色を形成しています。この技法は、性質や収縮率の異なる複数の土を接合させるため、乾燥や焼成の過程で亀裂や歪みが生じるリスクが極めて高く、常滑の伝統に裏打ちされた土の選定と、火の性質を知り尽くした熟練の勘がなければ到底成し得ない難易度を誇ります。
作品の意匠を詳細に観察すると、高い高台から優美に広がる馬上杯特有の造形が、練り上げによる複雑なテクスチャを空間に際立たせています。表面に現れている地層や宇宙のうねりを想起させるダイナミックな紋様は、計算された作為と炎による窯変が融合した唯一無二の表情であり、1980年代という氏の創作活動における最盛期のエネルギーが凝縮されています。高さ約6.3cm、口径約5.3cmという繊細なサイズ感でありながら、手に取った瞬間に伝わる常滑焼らしい軽やかさと、視覚的な重厚感の対比こそが、世界のコレクターを魅了してやまない小西洋平氏の作品が持つ真の価値を雄弁に物語っています。
- 作者: 小西 洋平(こにし ようへい、1941- )
- 作者の代表的な活動歴: [1982年] フランスのバロリス国際陶芸ビエンナーレにて銀賞を受賞、[2013年] 常滑市指定無形文化財「常滑焼(手引ろくろ)」の保持者に認定。現在は日本工芸会正会員として、伝統技術を継承しつつ独学で進化させた「練り上げ」と「薄造り」の技法を武器に、現代常滑焼の最高峰として活動を続けている。
- 作品収蔵: ヴィクトリア&アルバート博物館(イギリス・ロンドン)、フィラデルフィア美術館(アメリカ)、愛知県立陶磁美術館(愛知県瀬戸市)、常滑市陶磁器会館(愛知県常滑市)、INAXライブミュージアム(愛知県常滑市)、他。特にロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館には、氏の代表的な技法である練り上げを用いた作品が収蔵されており、国際的な芸術価値が確定している作家である。
- 制作年代: 1980年代前半(箱の記載に基づく推定)
- 状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし、経年による風合いあり)
- 付属品: 紙箱(1985年5月銀座の書き込み・青花堂のシールあり)
- 材質: 陶器(常滑焼・練り上げ)
- 寸法: 口径 約 5.3 cm、高さ 約 6.3 cm
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