三代為吉 三ッ井為吉 作 九谷焼 色絵山水 ぐい呑 中曽根内閣総理大臣友好訪中乾杯記念作品 #198
三代為吉 三ッ井為吉 作 九谷焼 色絵山水 ぐい呑 中曽根内閣総理大臣友好訪中乾杯記念作品 #198
この作品は、1984年(昭和59年)に行われた中曽根康弘内閣総理大臣による中国公式訪問の際、日中友好と乾杯の儀を記念して制作された特別な九谷焼ぐい呑です。九谷焼の名門として知られる三代三ッ井為吉(本名:三ッ井詠一、1935年生)氏は、1979年の大平首相、1982年の鈴木首相に続き、中曽根首相の訪中時にも酒杯の制作を正式に拝命しており、本作はその歴史的な外交の舞台を彩るために生み出された由緒ある一客です。三代三ッ井為吉氏は、初代徳田八十吉の門下であった初代為吉の技法を継承し、古九谷以来の伝統的な九谷五彩(赤、黄、緑、紫、紺青)を現代的な洗練さで表現する作家として高く評価されています。
一見するとシンプルな意匠に見えるかもしれませんが、本作は安価な量産品とは一線を画す高度な技術の結晶です。九谷焼伝統の和絵具を厚く盛り上げるように乗せる技法により、絵具そのものに立体感と宝石のような透明感が生まれています。光を透過し、複雑に屈折させるこの色彩美は、転写プリントや洋絵具を用いた均一な製品では決して再現できないものです。また、山水を描く筆致には、入りから抜きに至るまで計算された緩急があり、一筆ごとに込められた筆の勢いと溜めが、小さな器の中に霧が立ち込めるような奥行きのある空気感を創出しています。描き込まない余白の配置の美しさと相まって、量産品にはない圧倒的な品格を漂わせています。
外面に施された為吉氏の真骨頂である山水人物文は、緻密な色絵技法によって静謐な世界観を描き出しています。この文様は、東洋文化において自然と人間の調和を象徴する普遍的なテーマであり、日本と中国の深い文化的繋がりを象徴する外交記念品として最適な意匠が選ばれています。また、九谷五彩による鮮やかな発色と、それを引き締める繊細な筆致は、氏が長年の研究の末に辿り着いた、古来の「用の美」と現代の芸術性の高度な融合を示しています。
寸法は高さ約5.3cm、直径約5.6cmと、掌に馴染む格調高いサイズで構成されており、外交の場における乾杯という一瞬の所作に最大限の品格を与えるべく設計されています。海外では、こうした日本の政治史と伝統工芸が密接に関わった資料的価値の高い作品が流通することは極めて稀であり、本作は単なる酒器としての枠を超え、20世紀後半の日中関係を象徴する文化財としての側面も持ち合わせています。作家の署名である「為吉」の銘が底面に刻まれた本作は、厳格な品質管理と格式が求められる首相外遊の記念品として、現代九谷焼が到達した一つの完成形を提示しています。
- 作者:三代 三ッ井為吉(みつい ためきち、1935~)
- 作者の代表的な活動歴:1961年 三代為吉継承。1987年 内閣総理大臣表彰受章。1994年 ニューヨーク・Switzer Galleryにて個展。1997年 ギャローデット大学客員教授就任。2002年 スミソニアン博物館にて個展・永久収蔵。2005年 エドワード・ギャローデット賞受賞。 作品収蔵実績:スミソニアン博物館(米・ワシントンD.C.)、ギャローデット大学(米)、石川県立美術館、能美市九谷焼美術館、他多数。
- 制作年代:1984年頃(昭和59年3月の中曾根内閣総理大臣中国訪問に合わせて用意されたものであると共箱に記載があります)
- 状態:非常に良い(欠けなし、割れなし)
- 付属品:専用共箱(作家直筆署名・捺印入り)
- 材質:陶磁器(九谷焼・色絵)
- 寸法:高さ 約 5.3 cm、口径 約 5.6 cm
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