人間国宝 五代 伊藤 赤水 作 無名異焼 優麗な万葉連綿 線刻 湯呑 ロックグラス『秋の野に萩』#199
人間国宝 五代 伊藤 赤水 作 無名異焼 優麗な万葉連綿 線刻 湯呑 ロックグラス『秋の野に萩』#199
新潟県佐渡市の伝統工芸である無名異焼を現代芸術の域へと昇華させ、2003年に人間国宝に認定された五代伊藤赤水氏による、極めて希少な万葉連綿線刻の作品です。無名異焼は、佐渡金山近傍から産出される酸化鉄を豊富に含んだ赤い粘土を用い、高温で焼き締めることで、陶器でありながら石のように硬く、金属的な響きを持つのが最大の特徴です。赤水氏は、世界最高峰のメトロポリタン美術館やヴィクトリア&アルバート博物館に作品が永久収蔵される、日本を代表する陶芸家です。
本作は、赤水氏の作品の中でも珍しい「文字」をモチーフにした連綿線刻の傑作です。器の表面には、万葉集の情景を象徴する「秋・乃(の)・野・仁(に)・萩」という五つの文字が、針のような細い道具を用いて一文字ずつ、息を呑むような精密さで刻み込まれています。これは単に文字を並べたものではなく、書道における連綿体、すなわち文字と文字を一筆書きのように繋げる筆致を線刻で再現したものであり、流麗な赤い線が器を巡ることで、佐渡の野を吹き抜ける風や時の流れを可視化しています。一度刻めば修正のきかない極限の集中力の中で、赤土の中に言葉の魂を掘り当てるこの表現は、無名異焼特有の極細粒子の土肌だからこそ実現できた、繊細かつストイックな芸術の極致です。
この五文字には、日本人が千年以上愛し続けてきた普遍的な原風景が凝縮されています。比較的によく見かける植物や果物をモチーフにした赤水氏の作品とは一線を画し、全文を刻まずにあえて象徴的な数文字を連綿の線で繋ぐ手法には、作家からのミニマリズム的な美学と知的なメッセージが込められています。共箱には、右から無名異、中央に萬葉、左に湯呑の文字が記されているようで(箱書きの完璧な読取りが難しく、あくまでも推測です)、作家が自ら万葉の詩の断片を器に封じ込めたことを証明しています。本来は湯呑として制作されたものですが、その深い赤の質感と文字の凹凸が指先に伝える感触を鑑み、当店では熟成された古酒を愉しむための特別な酒器として提案いたします。琥珀色の古酒を注ぎ、掌の中で万葉の情景を愛でる時間は、日本の伝統的な美意識である禅や静寂を体現する至福のひとときとなるはずです。
- 作者: 五代 伊藤 赤水(いとう せきすい、1941- )
- 作者の代表的な活動歴: 佐渡島に伝わる「無名異焼」を芸術の域へと高め、2003年に重要無形文化財「無名異焼」保持者(人間国宝)に認定。 [1973年] 日本伝統工芸展 高松宮総裁賞受賞、 [2005年] 紫綬褒章受章、 [2011年] 旭日小綬章受章。
- 作品収蔵: 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、メトロポリタン美術館、ビクトリア&アルバート美術館、スミソニアン美術館、他
- 制作年代: 2000年代〜2010年代(人間国宝認定後の円熟期) ※本作の「窯変」は、炎の制御のみで赤土を漆黒へと変化させ、佐渡の険しい海岸線を表現した五代赤水氏の代名詞的な意匠です。人間国宝に認定された2003年前後からさらに研ぎ澄まされた、作為を超えた自然の力強さと静寂が共鳴する、氏の表現の到達点を示す時期の作風です。
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状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし)
- 付属品: 共箱、藁
- 材質: 陶器(無名異焼・酸化鉄を多く含む佐渡の赤土)
寸法: 高さ 約 7.1 cm 、口径 約 6.7 cm
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