福岡県指定無形文化財保持者 高倉 国光 1986年 作 小石原焼 秘伝緑青釉 飛び鉄彫文 水滴 ウィスキードロッパー #209
福岡県指定無形文化財保持者 高倉 国光 1986年 作 小石原焼 秘伝緑青釉 飛び鉄彫文 水滴 ウィスキードロッパー #209
福岡県朝倉郡東峰村(小石原)を拠点とし、小石原焼の伝統を現代へと繋いだ伝説的陶工、高倉国光(たかくら くにみつ、1930-2021)による、極めて稀少な背景を持つ芸術的水滴です。氏は小石原焼の伝統を代々守る高倉家に生まれ、江戸時代から続く共同体としての技法を継承しながらも、その技術を芸術の域へと昇華させました。その卓越した功績は、1996年の「現代の名工(卓越した技能者)」表彰、2005年の瑞宝単光章受章、そして2014年の福岡県指定無形文化財保持者認定という、地域の陶工としては最高峰の評価によって裏打ちされています。作品は福岡県立美術館や九州国立博物館にも収蔵されており、小石原焼の歴史を語る上で欠かせない巨匠です。
本作は、通常の生活雑器としての小石原焼とは一線を画す、美術作品としての品格を湛えています。その証左として、陶底に刻まれた印には窯名である「高倉」ではなく、氏が自らの名を冠し、芸術家としての矜持を込めた一点物にのみ用いる「国光」の署名が刻まれています。さらに共箱の記載から、1577年創業という日本最古の墨の名門、奈良古梅園との深い関わりの中で、1986年5月26日に特別に制作された作品であることが判明しています。書道具の聖地とも言える古梅園のために、最高峰の墨に合わせる水滴として誂えられたこの器は、単なる工芸品の枠を超えた文化的な交わりの記録でもあります。
意匠には、高倉氏の真骨頂である飛び鉄(とびかんな)の技法が完璧なリズムで施されています。ゼンマイ鋼のヘラを用いて刻まれたこの連続紋様は、保持者ならではの迷いのない正確さと、手仕事が生み出す温かみが同居しており、器全体に心地よい躍動感を与えています。全体を覆う深く透明感のある緑青色の釉薬は、厚く掛けることで宝石のような光沢を放ちます。本来は書道具として水を一滴ずつ滴下させるために考案されたこの道具を、当店では洋酒や数十年の熟成を経た稀少な古酒を楽しむためのウォータードロッパーとして再定義いたします。
瓶詰めから数十年が経過した高純度のアルコールや古酒は、極めて微量の水を加えることで表面張力が変化し、閉じ込められていた複雑な香りと味わいの層が劇的に開く「加水による開花(Blooming)」の瞬間があります。この極めて繊細な変化を制御するためには、水を精密に一滴ずつ制御できるこの水滴の形状が最適です。その使い方は、驚くほど直感的で優雅です。本体上部にある小さな空気穴を指先で軽く押さえ、その指をわずかに浮かせたり閉じたりすることで、内部への空気の流れをミリ単位でコントロール。意図した通りの「一滴」を、琥珀色の液体へと静かに導くことができます。2021年の逝去により、氏のこうした特別な背景を持つ新作は二度と生み出されることはなく、まさに歴史の断片を所有するに等しい稀少な遺産と言えます。
- 作者:高倉 国光(たかくら くにみつ、1930-2021)
- 作者の代表的な活動歴:[1996] 現代の名工(卓越した技能者)として労働大臣表彰、[2005] 瑞宝単光章受章、[2014] 福岡県指定無形文化財 保持者に認定
- 作品収蔵:福岡県立美術館、九州国立博物館(展示実績)、東峰村小石原伝統産業会館 など
- 制作年代:1986年(昭和61年 / 奈良古梅園特別制作)
- 状態:非常に良い(欠けなし、割れなし) 付属品:共箱(高倉国光 署名・落款入り、奈良古梅園記あり)、栞
- 材質:陶器(小石原焼)
- 寸法:高さ 約 4.5cm、最大径 約 4.5cm
- 注意:当店が提供する商品は新品未使用であっても生産時期が大変古いものであり、すべて中古品として掲載しています。商品には経年によるダメージがある場合がありますので、ご理解及びご確認の上で購入をご検討ください。
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