常滑焼 伝統工芸士 初代 堀田 憲児 作 練込積層流紋 ロックグラス #246
常滑焼 伝統工芸士 初代 堀田 憲児 作 練込積層流紋 ロックグラス #246
常滑焼の伝統的な朱泥の技術を基盤としながら、現代的でモダンな「練り込み」の世界を切り開いた伝統工芸士・初代 堀田 憲児(ほった けんじ、1951-2017)氏の作品をご紹介します。本作は、1974年に「憲児陶苑」を設立して以来、独自の叩き上げの技術で土の性質をコントロールし、美しいマーブル模様に立体的なカット細工を融合させた、氏の代名詞とも言えるレトロモダンな現代工芸の精華といえる一客です。
技法の深淵:粘土による積層の構築と立体的なカットの律動
堀田憲児氏の作品における最大の核心は、異なる色彩を持つ粘土を幾重にも重ね合わせ、ロクロを引くことで自然な地層や木目のような模様を描き出す「練り込み(練り上げ)」技法にあります。本作の表面に見られる流麗なマーブル模様は、単なる表面の絵付けではなく、器の肉厚そのものが異なる土の集積体であることを示しています。さらに憲児氏は、この練り込みの模様の上から表面を丁寧に手作業で削り取る「水玉カット(彫り細工)」を施すことで、幾何学的なパターンと立体的な陰影が交差する、視覚的にも音楽的なリズムを感じさせる独自の意匠を完成させています。
物理的限界への挑戦:異種粘土の収縮率の調和
この技法が陶芸における高度な職人技と称される所以は、性質や収縮率の異なる複数の土を合一させる際の圧倒的なリスクにあります。通常、色彩の異なる粘土は成分構成が違うため、乾燥や焼成の過程でわずかな計算の狂いがあっても接合部から致命的な亀裂(キレ)や焼き割れが生じます。卓越した伝統工芸士としての厳しい土の管理と経験に基づき、本作のような数え切れないほどの界面を持つ積層構造を高温で歪みなく焼き抜くことは、至難の業です。一切の破綻を見せず、精緻な幾何学模様とカットが口縁から高台まで完璧に維持されている事実は、氏が持つ高度な技術的洗練を雄弁に物語っています。
造形美と実:無釉焼締めによる純粋なフォルムと手触り
本作は、釉薬を一切かけずに高温で焼き締める「無釉焼締め(むゆうやきしめ)」で仕上げられています。口径約6.0cm、高さ約8.0cmという端正な立ち姿は、非常にきめ細かく上質な土の質感をダイレクトに残しており、掌に吸い付くような心地よいマットな緊張感を漂わせています。ガラス質のコーティングがないからこそ、使い込むほどに手の油分が馴染み、時間とともに妖艶な色ツヤ(経年変化)が増していくという、育てる工芸としての「用の美」を体現しています。
古酒やウイスキーを嗜む、理知的なテイスティング体験
当店では、本来は湯呑やフリーカップとして制作された本作を、琥珀色の古酒や熟成されたジャパニーズ・ウイスキーを味わうためのロックグラスとして提案いたします。表面のさらりとした土肌を指先で愛でながら液体を注いだ際、器の内側に見え隠れする練り込みの紋様と、時の堆積が作り出した酒の琥珀色が静かに共鳴し合います。付属品のない本体のみの出品は、それゆえに作家が到達した技術の極致を気兼ねなく日常の生活に取り入れ、最高峰のクラフトを直接掌中で愉しむという、工芸の本質的な喜びを享受させてくれます。
- 作者: 堀田 憲児(ほった けんじ、1951-2017)
- 作者の代表的な活動歴: 1974年 憲児陶苑設立。国指定伝統的工芸品「常滑焼」伝統工芸士。1998年 長三賞陶業展 奨励賞受賞(ほか同展にて計5回入選)。2001年・2002年・2004年 東京ドーム テーブルウェア大賞入選。2002年・2004年 金津創作の森「酒の器」展入選。伊丹国際クラフト展入選。愛知県常滑市の「INAXライブミュージアム」公式オリジナル商品選定・展示販売実績。2017年逝去。現在は息子の拓見氏がその技術を受け継いでいる。
- 製作年代: 1990年代〜2010年代(推定)
- 状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし)
- 付属品: なし
- 材質: 陶器(常滑焼・練り込み)
- 寸法: 口径 約 6.0 cm、高さ 約 8.0 cm
- 注意: 当店が提供する商品は新品未使用であっても生産時期が大変古いものであり、すべて中古品として掲載しています。商品には経年によるダメージがある場合がありますので、ご理解及びご確認の上で購入をご検討ください。
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