サントリー美術館大賞展入選作家 北川 宏幸 作 焼〆打刻紋 馬上杯 テイスティンググラス #274
サントリー美術館大賞展入選作家 北川 宏幸 作 焼〆打刻紋 馬上杯 テイスティンググラス #274
本作は、現代の美術工芸界において極めて高いステータスを誇るサントリー美術館大賞展をはじめ、数々の主要公募展で華々しい足跡を残した京焼・清水焼の実力派陶工、北川宏幸(きたがわ ひろゆき、1955年-2017年)氏の卓越した感性と技術が結晶した焼〆打刻紋馬上杯です。作家自身が精魂を込めて制作した本作には、専用の真田紐付き木箱である共箱が付属しており、蓋表には作家直筆で焼〆打刻紋馬上杯と墨書され、蓋裏には弥三郎窯、宏幸の署名と鮮やかな朱の落款が据えられています。高さ約8.8cm、口径約5.7cmという格調高い馬上杯の造形は、手にした瞬間に引き締まった風格を伝え、冷酒や特別な古酒、高級なスピリッツを大ぶりの氷と共にゆっくりと愉しむための至高のジャパニーズコウゲイ酒器として圧倒的な存在感を放ちます。2017年に62歳という若さで急逝された北川氏の作品は、市場にあるものが生涯の遺作のすべてであり、今後新しい作品が世に出ることは絶対にないため、国内外のコレクターにとって極めて高い希少性と確固たる資産価値を有しています。
作者の北川宏幸氏は、1955年に京都府に生まれ、竹細工の名工であった祖父の職人精神を色濃く受け継ぎながら作陶の道を志しました。1977年に京都造形芸術学院陶芸科を卒業後、巨匠・木村盛康氏に弟子入りして4年間にわたり厳格な美意識を学び、翌 1978年には京都府立陶工専修職業訓練校成形科を卒業して極めて正確なロクロ成形技術を習得しました。1987年に京都府綴喜郡にて自らの窯である陶房弥三郎を開窯してからは、1988年の朝日現代クラフト展以及新匠工芸会展への入選を皮切りに頭角を現します。さらに1992年には、美術界において極めて入選が困難とされるサントリー美術館大賞展九二への入選という快挙を成し遂げ、同時に札幌芸術の森クラフト展、朝日陶芸展、京展にも立て続けに入選を重ねました。その後も1995年に新美工芸会展で奨励賞を受賞し、1997年には同展にてシンポ工業賞を受賞するなど、現代工芸の最前線において極めて華々しい実績を残し、京都陶磁器会館の特設展に選出されるなど、その卓越した手仕事は高く評価されてきました。
本作の意匠および装飾美を専門的に分析すると、北川陶芸の真髄である鉄釉や泥釉の緻密なコントロールと、気が遠くなるような手仕事の積み重ねが見事に結実していることが分かります。器の最大の特徴であり、氏の最も評価されている技法である打刻紋は、粘土が乾燥する前の極めて繊細なタイミングを見計らい、正確なピッチでびっしりと粒状の文様が刻まれており、器の上部や中ほどに美しい規則性をもたらしています。さらに器の胴部中央には、温かみのある赤茶色の泥釉の帯が配され、その上に緑色の斑紋と贅沢な金彩が焼き付けられており、素朴な焼〆の質感の中に京焼由来の華やかでモダンなコントラストを生み出しています。この鮮やかな帯の下部には、箆目や力強い打刻を組み合わせた複雑で有機的な彫刻紋様の帯が広がり、手触りにも圧倒的な陰影を与えています。馬上杯を支える脚部には、艶やかで深い黒の鉄釉が施されることで、器全体の骨格をスマートに引き締めており、器の内側全体には、酒を注いだ際に光を反射して怪しくも美しい揺らぎを演出する、独特の金属的光沢を持つ釉薬が美しくまとわされています。器の底部の高台内には、作家の真正の作であることを証明する宏の文字をデフォルメしたモダンな陶印が鮮明に刻印されています。
本作の製作年代は、1990年代半ばから2000年代頃の中期から後期にかけての全盛期と推察されます。付属する公式の陶歴栞は、平成9年(1997年)の受賞および平成7年(1995年)からの定期的な個展開催の記録で締めくくられており、本作がそれ以降に世に出たことを明確に示唆しています。作風の観点からも、1987年の開窯、そして1992年のサントリー美術館大賞展入選を経て完全に確立された、緻密な打刻紋と多層的な泥釉・鉄釉・金彩のコントロール技術が最高水準で融合しており、主要都市の美術サロンや百貨店の画廊で一点物の格調高い酒器として精力的に発表されていた時代背景を色濃く反映しています。早世された名工の技法がもっとも成熟した瞬間の輝きを宿す、一切の隙のない最高のコンディションを保った至高の美術工芸ピースです。
- 作者:北川 宏幸(きたがわ ひろゆき、1955年-2017年)
- 作者の代表的な活動歴:[1977年] 京都造形芸術学院陶芸科卒業、京都クラフト展入選、[1978年] 京都府立陶工専修職業訓練校成形科卒業、[1987年] 「陶房弥三郎」を開窯、[1988年] 朝日現代クラフト展入選、新匠工芸会展入選、[1991年] 朝日現代クラフト展入選、[1992年] サントリー美術館大賞展九二「挑むかたち」入選、札幌芸術 of の森クラフト展入選、朝日陶芸展入選、京展入選、[1995年] 新美工芸会展奨励賞受賞、[1996年] 日清めん鉢大賞展入選、[1997年] 新美工芸会展シンポ工業賞受賞
- 作品収蔵実績:京都陶磁器会館(特設展・クローズアップ陶人選出)などへのパブリックコレクション収蔵
- 製作年代:1990年代半ば~2000年代頃(推定。付属の栞の陶歴や、緻密な打刻・泥釉・金彩が完璧な調和を見せる作風の成熟度から、個展全盛期を迎えていた中期から後期にかけての貴重な優品と推察されます)
- 商品状態:非常に良い(欠けなし、割れなし)
- 付属品:専用共箱、公式陶歴(栞)あり
- 材質:陶器(焼〆・泥釉・鉄釉・金彩)
- 寸法:高さ 約 8.8 cm、口径 約 5.7 cm
- 注意:当店が提供する商品は新品未使用であっても生産時期が大変古いものであり、すべて中古品として掲載しています。商品には経年によるダメージがある場合がありますので、ご理解及びご確認の上で購入をご検討ください。
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