工芸技術保存資格者 京都伝統陶芸家協会副会長 二代 宮永東山 宮永 友雄 作 瑠璃釉金彩 神字 輪花 菓子器 菓子鉢 果物鉢 #486
工芸技術保存資格者 京都伝統陶芸家協会副会長 二代 宮永東山 宮永 友雄 作 瑠璃釉金彩 神字 輪花 菓子器 菓子鉢 果物鉢 #486
京焼の名門・宮永東山窯の二代目、二代宮永東山氏(本名:宮永友雄、1907-1995)による「瑠璃釉金彩 神字 菓子器」です。深い瑠璃色の釉薬で器全体を覆い、見込みに金彩で神代文字を一行に描いた輪花形の鉢で、作家の墨書と朱印のある共箱と、朱印入りの共布が付属します。二代宮永東山氏は初代以来の青磁や染付、色絵陶器などを手がけ、高級食器に優れたことから「食器の東山」と称されました。本作は、その二代の高級食器の作風を示す一品です。
宮永東山窯の歴史は初代宮永東山氏(本名:宮永剛太郎、1868-1941)に始まります。初代は石川県大聖寺藩士の家に生まれ、東京美術学校校長・岡倉天心の助手として西欧諸国の美術施設の調査に従事しました。その後、農商務省パリ万国博覧会臨時事務所に勤務して現地に派遣され、その折に七代錦光山宗兵衛と知り合います。帰国後は京都に移って錦光山工場の美術顧問となり、明治の京焼の改革に取り組みました。明治36年(1903)には、窯業化学者の中沢岩太と洋画家の浅井忠の肝いりで結成された日本最初の陶磁器意匠研究団体「遊陶園」に参加しています。明治42年(1909)には伏見稲荷山麓の深草に東山窯を築きました。「東山」の陶号は、東京仏語学校時代に約2年間居を共にした友人の幸田露伴が、『孟子』の「孔子登東山」から選んで命名したものです。昭和期には帝展に「二彩花瓶」「水青磁華文五角花瓶」が入選し、第14回以後は無鑑査となりました。青磁を最も得意とし、「青磁の東山」と称されました。
二代宮永東山氏は1907年(明治40)8月、初代の息子として京都市に生まれました。京都第一中学校を経て、昭和5年(1930)に京都高等工芸学校図案科を卒業しています。昭和10年(1935)には国立陶磁器試験場伝修生を修了し、在籍中は長石の研究などを行いました。また、この時期に沼田一雅に師事しており、同門には八木一夫がいます。昭和14年(1939)に第3回文展に入選し、昭和16年(1941)12月、初代の急死により二代東山を継承しました。昭和18年(1943)には、戦時下の体制で制定された国の工芸技術保存資格者に認定されています。戦後は国による伝統技術者認定の近畿ブロック認定実施委員を務めました。昭和30年(1955)からは武者小路千家(官休庵)の有隣斎宗匠のもとで茶の湯を学び、昭和35年(1960)には京都伝統陶芸家協会の結成に参加して副会長を務めています。昭和39年(1964)から平成2年(1990)まで千茶道文化学院の講師を務め、昭和50年(1975)以降は世界各地を旅行して、特に中近東や地中海沿岸の焼物と古美術について豊富な見聞を得ました。平成7年(1995)3月に逝去しています。
宮永東山の名跡は、二代の長男である宮永理吉氏(1935年生)に受け継がれています。理吉氏は昭和45年(1970)に前衛陶芸家集団「走泥社」に参加し、彫刻としての造形性を追求する作品で知られます。宮永家は120年以上にわたりやきものに携わってきた家系です。また、二代東山の死去までの数多くの二代作品や東山窯作品は、二代夫人恵子氏の努力によって自宅に残されていました。これらは戦後京焼の貴重な資料群として、関西の陶磁史研究者・学芸員・陶芸家による京都近代陶磁器研究会が調査し、「宮永東山窯陶磁器データベース」として公開されています。
宮永東山窯で最も評価されてきた技法は、初代の「青磁の東山」の名が示す青磁です。二代は、その青磁に加えて染付や色絵陶器を含む高級食器の分野で「食器の東山」と称されました。本作は青磁ではなく、瑠璃釉と金彩による色絵系の高級食器にあたり、二代の真骨頂である上質な食器の仕立てがはっきりと表れています。器の内外は、むらの少ない濃い瑠璃釉で均一に覆われ、強い光沢を放っています。口縁は切り込みを入れた輪花形で、縁には金彩の金縁が一周めぐります。口縁の内側には一段の稜線が設けられています。この稜線では釉が薄くなるため、器の深い瑠璃色の中に明るい青の線が浮かび上がり、輪花の輪郭を内側から縁取っています。見込みには、上絵付の金彩で細く伸びやかな線の文字を一行に連ねています。濃紺の地に金の線が映える端正な意匠で、装飾を見込みの一行に限ることで瑠璃釉の深い色を引き立てる構成です。高台は比較的高く削り出されており、高台内には瑠璃釉が掛けられ、中央に金彩で楕円形の「東山」の窯印が記されています。高台の内側面には白い素地がのぞき、瑠璃釉との対比を見せています。
見込みの文字は、共箱の箱書と貼紙に「神字」とある通り、神代文字(じんだいもじ)を描いたものです。神代文字とは、漢字が伝来する以前の日本に固有の文字が存在したと主張されてきた文字の総称です。日文(ひふみ)、天名地鎮(あないち)、阿比留(あひる)などの種類が知られ、その多くは一字で一つの音を表す表音文字です。上古の日本に文字があったとする説は鎌倉時代から見られますが、議論が特に盛んになったのは江戸時代です。江戸後期には、国学者の平田篤胤が『神字日文伝(しんじひふみでん)』で実在を説き、伴信友が『仮字本末(かなのもとすえ)』で否定説を唱えるなどの論争がありました。現在の国語学では、神代文字はいずれも後世に作られたものとされています。本作の箱書が用いる「神字」という呼び名は、篤胤の著作名にも見られる、神代文字の伝統的な呼称です。茶の湯にも通じた二代宮永東山氏が、こうした文字を高級食器の意匠として用いた点に、本作ならではの珍しさがあります。
本作の文字は、曲線を連ねた草書風の字体で、10字が一行に描かれています。10字の中に同じ字形が二度現れる箇所はありません。文字の内容は共箱や付属資料に記されておらず、字表との照合による解読も確定していません。そのうえで当店の推測を申し添えると、ひふみ祝詞の冒頭の十音「ひふみよいむなやこと」を記したものである可能性を考えています。根拠は二つあります。一つは、10字すべてが異なる字形であり、重複する音を含まないこの十音と条件が一致することです。もう一つは、神代文字の一種が「日文(ひふみ)」と名付けられている通り、神代文字が「ひふみ」の音の並びと結び付けて伝えられてきたことです。
「ひふみよいむなやこと」は、一から十までを表す日本古来の数詞「ひと・ふた・み・よ・いつ・む・なな・や・ここの・とお」の、それぞれ最初の音を並べたものです。この十音で始まるひふみ祝詞は、47の音を一度ずつ重複なく連ねた祝詞で、神道系の伝統の中で唱えられてきました。この推測が正しければ、本作の見込みには、一から十までの数を唱える祝いの言葉が金彩で収められていることになります。ただし、これは字数や字形の特徴に基づく当店の推測でありますので、あくまでも参考までにしてください。
付属の共箱は杉材で、蓋表に墨書による題と「東山造」の署名があり、朱文の楕円印「東山」が捺されています。器を包む共布にも、同じく朱文の楕円印「東山」が捺されています。箱の側面には「東山」「神字菓子鉢」の墨書と、旧字体の「貳百」で始まる二百円台の金額を記した貼紙(値札)が残っています。制作年代は、二代宮永東山氏の作であることから、二代を襲名した昭和16年(1941)12月以降です。さらに当店では、この値札の価格の水準から、戦後の昭和20年代から30年代前半頃に頒布されたものと推定しています。
高さ約7.0cm、直径約21.5cmの、浅めでゆとりのある鉢です。和菓子や干菓子を盛る菓子器としてはもちろん、古酒やウイスキーを楽しむ場で、ナッツやチョコレート、季節の果実を盛る器としてもお使いいただけます。濃い瑠璃色と金彩の対比は、照明の下で一層深みを増します。宮永東山窯の歴史と二代の高級食器の仕事を伝える、海外ではほとんど紹介されることのない京焼の一品です。
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作者:二代 宮永 東山(みやなが とうざん、1907年-1995年)/本名:宮永 友雄
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作者の代表的な活動歴:[1930年] 京都高等工芸学校図案科卒業、[1935年] 国立陶磁器試験場伝修生修了(沼田一雅に師事)、[1939年] 第3回文展入選、[1941年] 二代宮永東山を襲名、[1943年] 工芸技術保存資格者に認定、[1955年] 武者小路千家有隣斎宗匠のもとで茶の湯を学ぶ、[1960年] 京都伝統陶芸家協会の結成に参加(のち副会長)、[1964年] 千茶道文化学院講師(1990年まで)、[1968年] 東京日本橋三越にて宮永東山・恵子夫人・理吉三人展、[1983年] 東京日本橋三越にて宮永東山・理吉展、[1987年] 京都市美術館「近代の潮流:京都の日本画と工芸」出品
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作品収蔵実績:公的機関での収蔵記録は未確認(二代および東山窯の作品群は京都近代陶磁器研究会により調査され、「宮永東山窯陶磁器データベース」として公開)
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制作年代:昭和期(1941年12月の二代襲名以降。値札の価格表記から、戦後の昭和20年代〜30年代前半頃と推定)
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商品状態:良好(目立つ欠け・割れなし。口縁の金彩に経年による擦れあり)
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付属品:共箱(墨書「東山造」、朱文楕円印「東山」、側面に値札貼紙)、共布(朱文楕円印「東山」)
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材質:陶磁器(瑠璃釉、金彩)
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寸法:高さ 約 7.0 cm、直径 約 21.5 cm
- 注意:当店が提供する商品は新品未使用であっても生産時期が大変古いものであり、すべて中古品として掲載しています。商品には経年によるダメージがある場合がありますので、ご理解及びご確認の上で購入をご検討ください。
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