益子焼 伝統工芸士 北土窯三村陶苑 三村 北土 作 糠釉抹茶碗、和のロックグラス、元栃木県窯業指導所技官 糠釉抹茶碗 #490
益子焼 伝統工芸士 北土窯三村陶苑 三村 北土 作 糠釉抹茶碗、和のロックグラス、元栃木県窯業指導所技官 糠釉抹茶碗 #490
栃木県益子町に生まれ、益子焼の技術者育成の場で学び、のちに後進を育てる側に立った陶芸家、三村北土(みむら ほくど、本名 三村孝夫)氏による糠釉抹茶碗をご紹介します。共箱には「糠釉抹茶碗」の箱書と「北土」の署名、落款が添えられ、高台脇には「北土」の陶印が捺されています。大きく流れる乳白の糠釉と、砂気を含んだ茶褐色の地肌が一碗の上でせめぎ合う、益子の土と釉の魅力を率直に伝える作品です。当店ではこの茶碗を、琥珀色の古酒を大きめの氷とともにゆったりと味わうための、ジャパニーズコウゲイの和のロックグラスとしてご提案いたします。
三村北土氏は大正9年(1920年)、益子町に生まれました。昭和13年(1938年)に益子陶磁器伝習所研究科を卒業し、同年、青森県工業試験所窯業部の技術員となります。昭和20年(1945年)にはタイ国バンコク郊外で製陶に従事しており、日本の窯業技術者として海外での作陶経験を持つ点も、この作家の経歴の大きな特色です。帰国後の昭和24年(1949年)には栃木県窯業指導所の技官となり、同所の後継者養成指導員として益子焼の次世代の担い手の育成に携わりました。益子陶器伝習所に始まり、栃木県窯業指導所を経て現在の窯業技術支援センターへと連なるこの機関は、益子焼をはじめとする栃木県の窯業の後継者育成と技術研究を担ってきた場所です。三村氏はそこで学び、のちに教える立場となった、益子焼の技術の継承に深く関わった人物でした。
昭和45年(1970年)、三村氏は益子町道祖土(さやど)に北土窯を築いて独立し、自営の作家として歩み始めます。栃木県芸術祭賞を受賞し、伝統工芸展、北関東美術展、日本陶芸展に入選を重ねました。昭和55年(1980年)には伝統工芸士に認定されています。前年の昭和54年(1979年)に、益子焼は国の伝統的工芸品に指定されたばかりでした。北土窯はのちに北土窯三村陶苑として家族とともに営まれ、三村氏は本名の三村孝夫名義で、家族総出で子ども向けの益子焼解説書にも携わっています。
北土窯が自ら掲げた作陶の姿勢は、窯の栞に記された言葉に明確に表れています。そこでは、素朴で重厚な風味こそ益子焼本来の姿であるとし、手造りと登窯、薪で焚く焼成によってその姿を追い求めると述べています。また、父祖から受け継いだ技術を練磨し、伝統民芸の心を心として、人々の日常生活に即した、正しく健康で美しいものを造ることに専念するとも記しています。民芸の精神に根差した実直なものづくりこそが、この作家の作品を理解するうえでの核となります。
本作を細かく観察すると、その作陶姿勢が造形と釉調の随所に表れていることがわかります。器形は、高台から腰にかけて張りを持って立ち上がり、胴の中ほどにゆるやかな段を設けたうえで、口縁に向かってわずかにすぼまります。轆轤目が胴全体に穏やかに残り、胴の一部には手で押さえたような柔らかな窪みと歪みが見られます。均整を意図的にわずかに崩した、手造りならではの表情です。口縁は薄く挽かれ、釉が薄くなった縁から土の色がほのかに透けて、飲み口に素朴な温かみを与えています。高台はしっかりと削り出され、畳付から高台脇にかけては施釉をせずに土を見せています。益子の土らしい砂気の多いざっくりとした肌合いが、手に取ったときの確かな重みとともに伝わります。
釉の構成は本作の最大の見どころです。器の地となる部分は、鉄分を含む茶褐色から焦げ茶色の釉で覆われ、細かな粒子が星のように散った、ざらりとした質感をみせます。その上に箱書の示す糠釉が大胆に掛けられています。乳白色の釉は胴から高台脇へと一気に流れ落ち、高台際では釉溜まりとなって、ガラス質の艶やかな光沢を帯びています。白釉と地の釉が重なり合う境目では、白い釉の中に青みを帯びた細い筋が無数に現れ、流れに沿って雨垂れのような景色を描いています。糠釉に特有の乳白の失透感と、地の釉と溶け合うことで生まれる青白い流れ模様は、施釉と焼成の偶然と作り手の計算が重なって初めて生まれるものです。一碗のなかで見る角度ごとに表情が大きく変わり、白い流れが大きく走る面、茶褐色の地肌が静かに広がる面、白釉が小さく点じられた面と、景色を回しながら楽しめます。益子焼では柿釉、並白釉、糠白釉など土地の伝統的な釉薬と、掛け流しなどの技法が受け継がれてきました。本作はその益子の釉と技法の伝統を、抹茶碗という器に端正に凝縮した作例といえます。見込みは灰白色の釉で穏やかにまとめられ、鉄分の小さな斑点が散って、外側の力強い景色と好対照をなしています。
直径約12.0cm、高さ約8.1cmのたっぷりとした碗形は、大ぶりの丸氷を浮かべるのにちょうどよい大きさです。乳白と茶褐色のコントラストは、琥珀色の古酒の色をいっそう美しく引き立てます。厚手の陶器ならではの穏やかな保冷性と、両手に包み込むような安定感も備えています。なお陶器は吸水性があるため、ご使用前に器を水にくぐらせ、ご使用後は十分に乾燥させてから保管されることをおすすめいたします。海外ではほとんど知られることのない、益子の技術継承を支えた伝統工芸士の手による一碗です。古酒とともに過ごす特別な時間の器として、また益子焼の伝統を伝える工芸品として、末永くご愛用いただければ幸いです。
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作者: 三村 北土(みむら ほくど、本名 三村孝夫、1920-2003)
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作者の代表的な活動歴: [1938年] 益子陶磁器伝習所研究科卒業、同年 青森県工業試験所窯業部技術員、[1945年] タイ国バンコク郊外にて製陶に従事、[1949年] 栃木県窯業指導所技官、同所後継者養成指導員、[1970年] 益子町に北土窯を築窯し自営、栃木県芸術祭賞受賞、伝統工芸展・北関東美術展・日本陶芸展入選、[1980年] 伝統工芸士認定
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制作年代: 1970年代~1990年代(推定)
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商品状態: 非常によい(欠けなし、割れなし)
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付属品: 共箱(箱書「糠釉抹茶碗」、署名「北土」、落款)
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材質: 陶器(益子焼)
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寸法: 直径 約12.0cm、高さ 約8.1cm、重量 約337g
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