越前 芦原焼窯元 天声造 久世 天聲(二代推定)作 手捻り 辰砂窯変 湯呑 銅釉の窯変 和の洋酒器 #502
越前 芦原焼窯元 天声造 久世 天聲(二代推定)作 手捻り 辰砂窯変 湯呑 銅釉の窯変 和の洋酒器 #502
福井県あわら市の芦原焼窯元で作られた、「天声造」の箱書を持つ手捻りの湯呑をご紹介します。箱書と陶印に代数の表記はありませんが、当店では2代久世天聲氏の作と推定しています(根拠は後述します)。共箱の蓋表には「手捻り 辰砂窯変 湯呑」、蓋裏には「越前 芦原焼 天声造」と記されています。当店では、高さ約9.3cm、口径約8.3cmの手に収まる大きさと、深い赤を基調とした釉の景色を生かし、古酒ウイスキーをストレートや小ぶりの氷とともに味わう和の洋酒器(酒器)としてご提案いたします。
芦原焼は、福井県あわら市温泉に窯元を構える焼物です。あわら市観光協会の紹介によれば、初代久世天聲氏が東尋坊にほど近い陣ヶ丘の土で作陶したことに始まり、銅分の多い釉薬が生む淡い水色を持ち味としています。1914年(大正3年)に初代が窯を築いて芦原焼を始めたとする紹介もあり、そこでは釉の原料に銅分の多いマラカイト(孔雀石)を用い、淡い青や緑の色合いが生まれると説明されています。福井県文書館の記録では、1916年(大正5年)4月4日付の大阪朝日新聞(北陸版)に、久世天声の名を添えた「越前唯一の芦原焼(上)」という記事が載っています。開窯から間もない時期に、すでに新聞で取り上げられていたことになります。窯はその後3代目まで受け継がれましたが、同協会の紹介では、3代目はすでに亡くなられ、窯元の店舗では作品のみを販売しているとされています。
美術家の物故者をまとめた資料では、初代久世天聲の生没年を1878〜1933年、2代を1909〜1987年とし、2代については初代から引き継いだ芦原焼をさらに発展させたと記しています。「天聲」の名は初代から2代へと受け継がれましたが、3代目がこの名を用いたかどうかは、当店が確認できた資料からは分かりませんでした。本品を2代の作と推定する理由は三つあります。一つ目は、資料で「久世天聲」の名が確かめられるのが初代と2代であることです。二つ目は共箱の状態で、端に薄いシミはあるものの木地の白みが強く、経年による焼け(色の濃化)が目立ちません。1933年に没した初代の在世中に誂えられた箱とみるには新しい印象があり、初代の作である可能性は低いと考えています。三つ目は、2代の生没年から、その作陶期が昭和の大半に及んだと考えられることです。いずれも推定であり、代を確定するものではありません。3代目の作である可能性も否定できません。なお、芦原焼の窯元の家には陶造形家の久世建二氏(1945〜2020年)も生まれており、同氏は2007年から2014年まで金沢美術工芸大学の学長を務めました。
芦原焼の特色として紹介されているのは、銅を多く含む釉薬による発色です。陶芸でいう辰砂釉は、鉱物の辰砂に似た赤を出す釉ですが、発色のもとは水銀ではなく銅で、還元焼成によって赤を得ます。還元焼成とは、窯の中の酸素を少なくして焼く方法です。同じ銅の釉を酸化焼成した場合には、淡い緑に発色するとされます。芦原焼を代表する淡い水色が銅による青緑系の色調であるのに対し、本品は箱書の「辰砂窯変」のとおり、銅の赤を主調とした作品です。器面は深い赤を基調とし、紫がかった部分と乳白色を帯びた淡い桃色の部分が入り混じっています。胴の下部から裾にかけてと胴の所々には、緑色の斑が現れています。窯変とは、焼成中の炎や窯の中の状態によって釉の色や質感が変化することを指す言葉で、本品では赤、紫、乳白色、緑が一つの器の中に共存しています。銅を多く含む釉を特色とする窯の仕事が、本品では赤を主とした窯変の表現として示されています。
器形は、箱書にある手捻り(手で土を捻って形づくる成形)によるものです。筒形に近い胴は場所によってわずかに膨らみ、裾に向かって緩やかにすぼまります。胴には指やへらで押したような縦方向のくぼみと起伏が全周に連なり、くぼみの縁にできた稜線では釉が薄くなって、淡い黄白色が細い縦の線となって浮かび上がっています。胴の上部には小さなくぼみが点々と並び、その部分でも釉が薄くなって明るい色がのぞいています。口縁は釉が薄く掛かり、淡い黄緑がかった色調に縁取られています。釉は胴の下部で止まり、釉際は厚みのある線を描いています。釉際には、焼成中に流れた釉が玉状に溜まって裾に垂れ下がった部分があり、裾の釉の厚い部分には細かな貫入(釉の表面に生じた細いひび模様)が見られます。釉の掛かっていない腰から高台にかけては、細かな砂粒と小さな黒い斑点を含む淡い肌色の土肌がのぞき、高台は低く、段のついた形をしています。高台の内側には渦を巻くような削り跡が残り、中央がわずかに盛り上がっています。腰の土見せ部分には、「芦原」「天声」と読める方形の陶印が押されています。見込みにも釉が掛かり、深い赤から赤紫、焦茶色、緑が入り混じっています。底の中央には釉がガラス質に溜まり、光沢を湛えています。
口径約8.3cmの器に注ぐと、深い赤の見込みに古酒の琥珀色が重なります。手捻りによる成形と窯変による釉の景色は、一点ごとに異なります。芦原焼は福井県あわら市の一つの窯元で受け継がれてきた焼物で、英語で読める情報はほとんど見当たりません。共箱の蓋表には「手捻り 辰砂窯変 湯呑」の箱書と「芦原焼」の署名、朱印二顆があり、蓋裏には「越前 芦原焼 天声造」の墨書と丸い朱印があります。朱の丸印が押された黄色の包布も付属しています。
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作者: 久世 天聲(くぜ てんせい、2代と推定、1909〜1987年)
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作者の代表的な活動歴: [1914年] 初代久世天聲氏が陶窯を築き芦原焼を始める(大正3年開窯とする紹介による)、[1916年] 大阪朝日新聞(北陸版)に「越前唯一の芦原焼(上)」と題した記事が掲載される、[1933年] 初代逝去。2代久世天聲氏(1909〜1987年)は初代から受け継いだ芦原焼を発展させたとされる、[2020年頃まで] 窯を継いだ3代目が逝去し、窯元の店舗は作品の販売のみとなる
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作品収蔵実績: 公的機関の収蔵記録は確認できていません
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制作年代: 1933年~1987年頃と推定(2代の作と推定した場合の、初代の没年から2代の没年までの範囲。共箱の経年の少なさから、このうち戦後の可能性が高いと考えています。代を特定しない場合の範囲は、開窯の1914年から3代目の逝去が紹介された2020年頃まで)
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商品状態: 良好(釉溜まりと貫入は釉の景色です)
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付属品: 共箱(蓋表に箱書「手捻り 辰砂窯変 湯呑」、署名「芦原焼」、朱印二顆、蓋裏に「越前 芦原焼 天声造」、朱印)、包布(朱印あり)
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材質: 陶器
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寸法: 口径 約8.3 cm、高さ 約9.3 cm
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