京都国立近代美術館収蔵作家 日本工芸会正会員 武田 敏男 作 鉄絵 山帰来茶碗 人間国宝 田村耕一師事 和のロックグラス #503
京都国立近代美術館収蔵作家 日本工芸会正会員 武田 敏男 作 鉄絵 山帰来茶碗 人間国宝 田村耕一師事 和のロックグラス #503
1932年(昭和7年)に富山県高岡市に生まれ、1964年から栃木県益子に窯を構えて作陶を続けた陶芸家、武田敏男(たけだ としお、1932-)氏による茶碗をご紹介します。武田氏は日展、日本伝統工芸展、日本陶芸展に入選を重ね、日本陶芸展の出品作はカナダ・アメリカ巡回展に選ばれたのち、京都国立近代美術館に買い上げられました。日本工芸会正会員であり、日本工芸会新作展の鑑審査委員も務めています。本品は共箱に「山帰来茶碗」と記された抹茶碗です。当店では、ゆったりとした口径と手になじむ丸みのある姿を生かし、大ぶりの氷を浮かべて古酒ウイスキーをオン・ザ・ロックで味わうための和のロックグラス(酒器)としてご提案いたします。
付属の栞「武田敏男・作陶歴」によると、武田氏は1955年(昭和30年)に金沢美術工芸大学を卒業し、引き続き同校の研究科で研究を続けました。1956年(昭和31年)には京都に出て米沢蘇峯氏に師事し、日展に入選しています。1957年(昭和32年)には金沢に戻り、九谷焼の北出塔次郎氏の助手として母校に勤務しました。1960年(昭和35年)には栃木県佐野の田村耕一氏を頼って師事し、田村氏の斡旋で益子の塚本製陶所に入って作陶の研究に専念しています。1963年(昭和38年)には釉薬と焼成の技術を習得するため名古屋工業試験所に入り、加藤悦三氏と森田四郎氏に学びました。翌1964年(昭和39年)に益子に窯を築いて独立し、1966年(昭和41年)には益子在住の同志と「象土会」を結成しています。その後の歩みは、1969年(昭和44年)の日本伝統工芸展入選、1971年(昭和46年)の毎日新聞社主催「日本陶芸展」入選と続きました。同展の出品作はカナダ・アメリカ巡回展に選ばれ、京都国立近代美術館に買い上げられています。1974年(昭和49年)に日本工芸会正会員となり、1983年から1986年にかけては日本工芸会新作展の鑑審査委員を務めました。1973年(昭和48年)から1990年(平成2年)までは東京・日本橋高島屋で第十回を数える個展を開き、横浜高島屋でも個展を重ねています。
武田氏の代表的な技法として、1990年の第37回日本伝統工芸展に入選した「鉄銅彩葡萄文鉢」に示される鉄銅彩が挙げられます。鉄銅彩は、鉄と銅という二つの金属の呈色を組み合わせて器面を彩る表現です。師の田村耕一氏は、鉄絵に銅彩を併用して色彩に変化を与える表現などが認められ、1986年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。武田氏の鉄銅彩はこの系譜に連なる技法です。本作では、黒褐色の鉄絵で描かれた葉や蔓と、紅色に発色した実が一つの画面で対比されています。鉄の深い色調にもう一色を添えて画面に変化を与えるこの構成に、武田氏の作風が明確に表れています。
本作の主題である山帰来は、日本では秋に赤い実をつけるつる性植物サルトリイバラの呼び名として親しまれてきた植物です。器の胴には、幅の広い筆で一気に描かれた丸みのある大きな葉が裾に沿って連なり、葉の内側には筆の運びによる濃淡と、葉脈のように細く抜けた線が残っています。葉の間からは、短い筆を点々と打ち重ねた蔓がすっと立ち上がり、その先に小さな実が房になって描かれています。実は淡い紅色を帯び、輪郭の暗い縁取りと部分的な金属的な光沢が、熟した実の質感を伝えます。絵付けは器の片側に寄せて配され、反対側は灰緑色の地をほとんどそのまま残しています。描かれた部分と余白の対比により、器を回すと野の草木から静かな地へと景色が移り変わります。鉄絵の筆線は釉の下に沈み、輪郭がわずかににじむことで、水墨画のような柔らかな味わいを生んでいます。
器全体を覆う灰緑色の釉は、しっとりとした落ち着きのある光沢を見せ、外面から見込みまで細かな貫入(釉の表面に生じた細いひび模様)が網目のように走っています。光の当たり方によって、青みを帯びた灰色から淡い緑へと表情を変えるのも見どころです。器形は、ゆったりと丸みを帯びた椀形で、口縁はほぼまっすぐに立ち上がり、口縁の際は釉が薄くかかって明るい色調に縁取られています。胴の下部には縦方向のゆるやかな起伏があり、手に取った際に指がほどよく掛かります。高台は低く引き締まり、畳付(底の接地部分)には釉が掛かっておらず、赤褐色の土肌がのぞきます。裾には釉を掻き取った方形の部分に陶印が押されています。見込みの中央には釉がわずかに溜まり、静かな光沢を湛えています。
口径約13.4 cmの広い口は大きな氷を無理なく受け止め、灰緑色の見込みに古酒の琥珀色がよく映えます。轆轤成形から絵付け、施釉、焼成まで作家自身の手を経た一点もので、筆の運びや釉の表情は二つとありません。武田敏男氏の作品は海外ではほとんど情報が流通しておらず、国立美術館の収蔵実績を持つ作家の、師の系譜を伝える鉄絵の器を手にできる機会は限られています。共箱には作家自筆の箱書「山帰来茶碗」と署名「敏男」、朱印があり、作陶歴を記した栞と包布も付属しています。
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作者: 武田 敏男(たけだ としお、1932-)
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作者の代表的な活動歴: [1955年] 金沢美術工芸大学卒業、同校研究科で研究、[1956年] 京都で米沢蘇峯氏に師事、日展入選、[1957年] 北出塔次郎氏の助手として母校に勤務、[1960年] 田村耕一氏に師事、益子の塚本製陶所で作陶研究、[1963年] 名古屋工業試験所で釉薬・焼成を研究、[1964年] 益子に築窯し独立、[1966年] 象土会を結成、[1969年] 日本伝統工芸展入選、[1971年] 日本陶芸展入選、カナダ・アメリカ巡回展に選抜、京都国立近代美術館買上げ、[1973年] 日本橋高島屋にて第一回個展(1990年の第十回まで継続)、[1974年] 日本工芸会正会員、[1983年] 日本工芸会新作展鑑審査委員(1984年、1986年も務める)、[1990年] 第37回日本伝統工芸展入選(鉄銅彩葡萄文鉢)
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作品収蔵実績: 京都国立近代美術館
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制作年代: 1990年(平成2年)頃~1990年代前半(推定。付属の栞の経歴が1990年の日本橋高島屋第十回個展で終わっていることによる)
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商品状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし。貫入は釉の景色です)
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付属品: 共箱(箱書「山帰来茶碗」、署名、朱印)、栞(作陶歴)、包布
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材質: 陶器
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寸法: 口径 約13.4 cm、高さ 約9.2 cm
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