吉田 丈夫 晩年作 手吹き硝子 クリスタル酒杯 『光の彫刻』#139
吉田 丈夫 晩年作 手吹き硝子 クリスタル酒杯 『光の彫刻』#139
昭和を代表するガラス工芸家、吉田丈夫(1916年-2002年)によって手掛けられたこのクリスタル酒盃は、素材が持つ極めて高い純度と、光の屈折を巧みに操る造形哲学が凝縮された至高の一品です。吉田丈夫は、派手な装飾や新技法の追求ではなく、クリスタルガラスという無垢な素材そのものといかに真摯に向き合い、その透明さを引き出すかに生涯を捧げた作家でした。その哲学は本作にも色濃く反映されており、余計な装飾を排した幾何学的な構成が、素材の持つ美しさを際立たせています。
特に目を惹くのは、台座部分に施された重厚な「彫刻的な面取り」です。ガラスの塊から光を鋭く削り出したかのようなシャープなカッティングは、作家の代名詞とも言えるデザイン様式であり、彼が追い求めた「光の構造を形にする」という造形美を見事に体現しています。また、本作の大きな見どころは、台座の厚みがある底部の中心に一点の丸い気泡が意図的に閉じ込められている点にあります。不純物を極限まで排した空間に配されたこの一粒の空気は、周囲の面取りカットによって反射した光を中心へと集め、まるで銀色の宝石のような神秘的な輝きを放ちます。
酒を注ぐボウル部分は端正な円筒型を成していますが、その底部を覗き込むと、流れる水や風を彷彿とさせる繊細な線刻模様が確認でき、硬質なクリスタルの中に柔らかなニュアンスを添えています。作品は横幅3.5cm、高さ8.0cmという小振りなサイズながら、実際に手に取った際にはクリスタル特有の心地よい重みと確かな質量感が掌に伝わります。共箱に記された力強い「丈夫作」の署名と落款は、素材の真価を問い続けた作家の誇りを象徴しています。光そのものをデザインの一部として取り込んだ本作は、端正なラインと底部の一粒の気泡の対比の中に、吉田丈夫の卓越した感性を余すところなく表現した傑作といえます。
- 作者:吉田 丈夫(よしだ たけお、1916年-2002年)
- 作者の代表的な活動歴:[1974年] 現代の名工として労働大臣表彰を受賞、[1977年] 第24回日本伝統工芸展に初入選、[1981年] 第28回日本伝統工芸展にて東京都知事賞を受賞、[1986年] 黄綬褒章を受章、[1988年] 代表作『伊達瓢』国立工芸館所蔵、[1990年] 通商産業大臣賞(伝統工芸産業優秀技術者表彰)を受賞、[1992年] 勲五等瑞宝章を受章、[1995年] 第42回日本伝統工芸展にて日本工芸会保持者賞を受賞。
- 制作年代:1980年代(推定)
- 状態:非常に良い(欠けなし、割れなし)
- 付属品:専用木箱
- 材質:手吹き硝子、クリスタル
- 寸法:高さ 約 8cm、横幅 約 3.5cm
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