広島県重要無形文化財 内田 泰秀 晩年成熟期、1984年作陶の傑作、幻の技法「表裏貫通錦練上手」白椿文高足皿 遺族由来満中陰書簡付属 #258
広島県重要無形文化財 内田 泰秀 晩年成熟期、1984年作陶の傑作、幻の技法「表裏貫通錦練上手」白椿文高足皿 遺族由来満中陰書簡付属 #258
昭和陶芸史において孤高の伝説と称される広島県重要無形文化財保持者、内田泰秀(うちだ やすひで、1893~1997年)氏。1970年の大阪万博への出品や名門フランス国立セーブル製陶所での研鑽を経て、日仏の美意識を融合させた独自の境地へと到達した同氏が、自身の晩年成熟期にあたる1984年7月14日に完成させた最高峰の傑作、失われた幻の技法である表裏貫通錦練上手(ひょうりかんつうにしきねりあげで)の陶製菓子皿(高足皿)をご紹介します。
本作は1984年の作陶後、最盛期の成熟した技法の最上位策のなかでも非売の作家保管用作品として内田家に大切に納められ続けていた特別な作品です。その後、百有余年という驚異の天寿を全うし遷化した氏の葬儀の際、参列したごく少数の近親者に御礼の品として手渡されました。その貴重な来歴の全容は、付属する内田氏の三男、佐用仁氏による平成9年3月20日付の満中陰の手紙を読み解くことで克明に確認でき、本作が正真正銘の内田家最上位の遺品であることを証明する無二の歴史的史料価値も備えています。直径約19cmの格式ある高足仕立ての本作を、当店では琥珀色の古酒や熟成されたプレミアムなジャパニーズウイスキーを愉しむ際に、極上の酒肴を美しく乗せるための最高峰のプレミアム皿として世界へ提案いたします。
内田泰秀氏の美術的価値の頂点に位置する技法が、この表裏貫通錦練上手です。器に施された美しい文様は、一見すると筆による絵付けのように見えるかもしれませんが、一切の顔料による表面的な彩色ではありません。これは、異なる金属酸化物を調合して色付けした幾種類もの粘土を、緻密な計算のもとでパズルのように組み合わせ、模様そのものを土の組織構造として作り上げる超絶技巧です。さらに最大の特徴である表裏貫通の名の通り、お皿の全面と後面には、コバルトブルーの背景の中にそれぞれ異なる構図の美しい絵としてこの文様が一点の狂いもなく完全に貫通して現れています。これは内部にいたるまで土の層が完璧に重なり合っている動かせない物証であり、被爆地・広島の出身である内田氏が生涯にわたり渇望し続けた、裏表のない純粋な平和への願いがこの究極の構造美の中に完全に封じ込められています。
お皿の意匠を詳しく観察すると、コバルトブルーの鮮烈な背景を背に、冬から春の始まり、ちょうど内田氏の葬儀が営まれた3月頃に静かに咲き誇る白い椿花をモチーフとした美しい花模様が生き生きと浮かび上がっています。厳冬の終わりを告げ、凛とした空気の中で開花する白椿の佇まいは、まさに内田氏が遷化され、ご遺族や親しい方々によって見送られた季節の叙情的な風景と美しく重なり合っており、作品に精神的な深みと尽きないロマンをもたらしています。
作品の表面はあえて均一な平坦には成型されておらず、手仕事ならではの味のある豊かな高低差が設けられています。掲載写真でもご覧いただける通り、光の当たる角度によって表面が白く乱反射する性質がありますが、この厚みが均一ではないからこそ生まれる意匠の圧倒的な深み、独特の温かさ、底に流れる陶器としての面白さをそのままお届けするため、ありのままの状態で撮影して掲載しております。さらに特筆すべきは、お皿の背面を確認すると、そこには作家自身の手によって大きく深く彫り込まれた内田氏のサイン(刻銘)が鮮明に遺されている点です。この力強い手彫りのサインは、本作が他ならぬ内田泰秀氏自身の直作であるという揺るぎない物証であると同時に、器全体の造形的な一体感と用の美をより強固なものにする重要な意匠の一部として圧倒的な存在感を放っています。
表裏貫通錦練上手という技法の特質上、性質や収縮率の異なる色土同士を接合して焼き上げるため、土の境界に細かな割れや開きが生じやすく、完璧な焼き上がりを得ることは極めて困難とされています。本作においては、表面の茶色の葉文様の中央部分において、土の境目がわずかに開いている箇所が1箇所確認されますが、これは穴として裏まで完全に貫通しているものではありません。また、表面上の釉薬には作陶時に生じた小さな気泡が2つほど確認できますが、これらはいずれも内田泰秀氏が最盛期の極限の集中力の中で生み出した手造りプロセスの揺るぎない証左であり、作品の完成度や格調を損なうものでは全くありません。フランス・セーブルで培われた色彩技術の粋と、日本の精神文化の神髄、そして一族の歴史を語る手紙が一体となった至高のマスターピースを、日常の特別な酒席の特等席でぜひご堪能ください。
[下記、遺族由来満中陰書簡の内容]
合掌
春陽輝き始め、御尊家様におかれましては益々御清祥の御事とおよろこび申し上げます。
過日、父内田泰秀儀遷化の際は、寒中の遠路も厭はずお駆けつけ頂き、懇篤なる御弔意を賜り洵に有難うございました。 大陸時代、三須時代、そして終焉の当地と、夫々に特にお親しく志て頂き、また心のこもった葬送を頂きましたお方々ばかりに葬送を頂き亡き父も如何ばかりか懐かしく感涙に噎んだことと深く謝礼を申し上げます。
この程、郷里島原護國寺に於いて当四十九日法要を相済ませ、本寿院日秀上人有明海を望む奥津城に還りました。波乱万丈の百有余年ではあります自らがその時々をひたすらに祖師の心を生き抜いたものと思います。晩年は山中陋房で自然法爾、陶芸生活を満足致しておりました。 偏に、長きに亘り御芳情御庇護戴きました皆様のお陰と、恵心より感謝申し上げます。
満中陰に当たり、微意ではございますが、慈許お礼の志るしお送り致します。誠に長い間を有難うございました。
平成九年三月二十日
再拝
佐用 仁(故人三男)
- 作者:内田 泰秀(うちだ やすひで、1893~1997年)
- 作者の代表的な活動歴: [1952年] 三越日本橋本店にて「内田泰秀氏錦練上手作陶展」を開催、 [1960年代] フランス国立セーブル製陶所(Manufacture nationale de Sèvres)にて色彩・磁器技術を習得、 [1965年] 三次市無形文化財に指定、 [1970年] 大阪万博(EXPO'70)にて作品展示、 [1973年] 広島県重要無形文化財の保持者として認定。
- 制作年代: 1984年(昭和59年)7月 14日
- 状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし、作品の特性としての表面の割けあり)
- 付属品: 専用木箱、包布(署名・落款入り)、遺族由来満中陰書簡
- 材質: 錦練上手(陶器、表裏貫通技法)
- 寸法: 高さ約 4.0 cm、口径約 19.0 cm(目安)
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