岐阜県芸術文化顕彰・トルコ政府オスマン・ハムディ芸術賞受章 日本工芸会正会員 新晶窯 加藤 賢司 作 鉄釉赤彩組湯呑 一対 #468
岐阜県芸術文化顕彰・トルコ政府オスマン・ハムディ芸術賞受章 日本工芸会正会員 新晶窯 加藤 賢司 作 鉄釉赤彩組湯呑 一対 #468
本品は、岐阜県多治見市の新晶窯で作陶した陶芸家、加藤賢司氏による「鉄釉赤彩組湯呑」の一対です。共箱の蓋表には「鉄釉赤彩組湯呑」の箱書と「新晶窯」の署名、朱の印が記されています。作家自身の陶歴を印刷した栞と包布も添えられています。本来は湯呑として作られた作品ですが、手に収まる寸法と厚みのある造りを活かし、当店では古酒をストレートでゆっくり味わうための和の酒器としてご提案いたします。
加藤賢司氏は1933年(昭和8年)7月21日、美濃焼の産地である岐阜県多治見市に生まれました。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)の陶磁器専攻を卒業し、富本憲吉氏、近藤悠三氏、藤本能道氏の各氏に師事しています。三氏はいずれも後に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された陶芸家です。色絵と染付の第一人者に学んだことが、加藤氏の作陶の出発点となりました。公益社団法人日本工芸会の記録では、2008年に逝去されています。
加藤氏の経歴の大きな特色は、早くから国際的に活動した点にあります。栞の陶歴によれば、1968年にアメリカのオハイオ州立大学で講師を務めました。インディアナ州立大学、ミシガン大学、アンティオク大学では講演を行い、1969年には米国のヘレン・ウインナモア画廊で個展を開いています。1971年から1973年にかけては日本政府派遣としてトルコ国立イスタンブール高等美術工芸の客員教授を務め、第5回世界工芸家大会(イスタンブール大会)には日本代表として参加しました。1976年には外務省国際交流基金派遣の陶芸使節としてオーストラリアとニュージーランドを訪れています。陶歴には1978年としてノルウェー、デンマーク、カナダの名も記されています。1978年に京都で開かれた第8回世界工芸家大会では、サブ・コーディネーターを務めました。
国内では、第2回東海伝統工芸展で日本工芸会長賞、第10回同展で愛知県教育委員会賞、第32回新匠工芸会展で富本賞を受賞しています。美濃陶芸協会理事、新匠工芸会会員、日本工芸会正会員、国際陶芸学会会員を務め、岐阜大学美術工芸学科の講師として後進の指導にもあたりました。作品はミシガン大学美術館(鉄釉花瓶)、ハンブルグ工芸博物館(赤絵角皿)、カンタベリー博物館(志野茶盌)、南オーストラリア美術館(鉄絵水指)、在デンマーク日本大使館(花瓶)に収蔵されています。
日本工芸会の出品記録をたどると、作風の変遷がよくわかります。1960年代半ばから1970年代初めにかけては「抜絵天目壺」を続けて出品しています。1974年の「色絵角組皿」を経て、1976年から1982年までは「赤絵角皿」などの赤絵作品を毎年発表しました。1984年以降は青釉の扁壺を手がけ、1986年頃からは晩年まで「トルコ青」の花瓶や香炉を中心に出品を重ねています。今日、加藤氏の代名詞として最も広く知られているのは、このトルコ青の作品群です。
本品にはトルコ青は用いられていません。一方で、収蔵作品にも名を連ねる鉄釉・鉄絵と、1970年代後半から80年代初頭に集中的に取り組んだ赤の上絵という、この時期の加藤氏を特徴づける二つの要素がはっきり表れています。
器体は轆轤で挽き上げた後、胴の数か所を指で押し込み、柔らかく波打つ輪郭に仕上げられています。口縁もわずかに外へ開きながら、ゆるやかに揺らいでいます。白く濁った釉が全体を覆い、近くで見ると細かな貫入が全面に走っています。
その上に、太い筆で鉄釉が縦に大胆に引かれています。鉄釉が薄い部分では白釉と溶け合って灰緑色の滲みとなり、濃く溜まった部分では黒褐色の艶を帯びます。さらにその中に、赤褐色から飴色の斑状の発色が点々と現れています。とりわけ指で押し込んだ凹みに釉が溜まった箇所では、この変化が強く出ており、成形と施釉が一体となった景色を見ることができます。
二客は意匠が異なります。一客は鉄釉の縦線に鮮やかな赤彩の円点を散らし、口縁にも鉄の縁取りを施しています。もう一客は赤を用いず、鉄釉の縦線に円環や鉤状の筆致を組み合わせています。対になりながらも表情の異なる「組」の構成です。
高台は低く削り出され、畳付は鉄分を含む暗紫褐色の土肌を見せています。高台内には釉が掛かり、中央の露胎部に方形の印が捺されています。黒の一客の高台内には、鉄分による小さな斑点が見られます。
制作時期は、付属の栞の内容から推定しています。栞に記された年代のある事項は、1978年の世界工芸家大会(京都大会)が最も新しいものです。日本工芸会の記録では東海伝統工芸展の第27回が平成8年度(1996年)にあたるため、栞にある第10回は1979年となります。一方で、1986年以降に代表作となったトルコ青の作品や、後年の受賞歴(オスマン・ハムディ芸術賞、東海伝統工芸展最高賞、岐阜県芸術文化顕彰)は栞に記載がありません。郵便番号も1998年以前の3桁表記です。以上から、1979年頃から1980年代中頃にかけての作と考えられます。赤絵作品の発表時期とも重なりますが、栞が一定期間使われ続けた可能性もあるため、あくまで推定です。
欠けや割れはなく、非常に良い状態を保っています。海外ではほとんど紹介されていない作家ですが、富本憲吉氏の系譜に連なる色絵の素養と、国際的な活動を背景にした自由な筆致を併せ持つ作品です。
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作者: 加藤 賢司(かとうけんじ、1933-2008)
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作者の代表的な活動歴: [1959年] 第6回日本伝統工芸展入選、[1968年] オハイオ州立大学講師、[1969年] 米国ヘレン・ウインナモア画廊にて個展、[1971年] 第2回東海伝統工芸展 日本工芸会長賞、[1971年-1973年] 日本政府派遣 トルコ国立イスタンブール高等美術工芸 客員教授、[1976年] 外務省国際交流基金派遣陶芸使節(オーストラリア、ニュージーランド)、[1978年] ノルウェー、デンマーク、カナダ(陶歴記載)、[1978年] 第8回世界工芸家大会(京都大会)サブ・コーディネーター、[1979年] 第10回東海伝統工芸展 愛知県教育委員会賞、[1986年] 第33回日本伝統工芸展「トルコ青扁壺」入選、[2001年] 第48回日本伝統工芸展「土耳古青花瓶」入選
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作品収蔵実績: ミシガン大学美術館、ハンブルグ工芸博物館、カンタベリー博物館、南オーストラリア美術館、在デンマーク日本大使館
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制作年代: 1979年頃~1980年代中頃(付属栞の記載内容による推定)
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商品状態: 非常に良い(欠けなし、割れなし)
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付属品: 専用共箱、包布、栞 あり
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材質: 陶器(鉄釉・赤彩)
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寸法: 赤 高さ 約 9.0 cm、口径 約 7.3 cm/黒 高さ 約 9.0 cm、口径 約 7.1 cm
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